「2つのものの間は “between”、3つ以上のものの間は “among”」。英語の授業で、まるで絶対的なルールのように、こう教わった記憶はありませんか?私も学生のころ、呪文のようにこれを覚えてテストに臨んだものです。このルールはとてもシンプルで分かりやすく、確かに多くの場面で役に立ちます。だからこそ、多くの人が「これが全てだ」と信じてしまいがちなんですよね。
でも、海外ドラマや映画を見ていると、「あれ?今、3つの国の話をしているのに “between” って言ったぞ…?」と、学校で習ったルールと違う場面に出くわして、頭に「?」が浮かんだことはないでしょうか。その「?」こそ、あなたがネイティブの感覚に一歩近づいている証拠なんです。この記事では、その「3つ以上なら “among”」という“常識”に少しだけ揺さぶりをかけ、それぞれの単語が持つ本当の心、つまりコアイメージから、二つの単語の違いを徹底的に解き明かしていきます。この記事を読み終える頃には、もう迷いません。自信を持って、状況にピッタリな「~の間」を表現できるようになっていますよ!
3人以上でもBetween?常識を疑え!
「え、本当に?」と思うかもしれませんが、答えはイエスです。ネイティブは3つ以上のものについて話すときにも、ごく普通に “between” を使います。では、学校で習ったルールは一体何だったのでしょうか?実は、あのルールは間違いではないのですが、「全体像の一部」でしかなかったんです。本当の使い分けの鍵は、数の問題ではなく、もっと深いところにある「意識」の違いにありました。まずは、私たちに馴染み深い “between” の本当の姿から探っていきましょう!
Betweenの本当の顔は「個々の関係性」
多くの人が “between” と聞くと、「2つのものの間」というイメージを思い浮かべますよね。それは、この単語の最も基本的で中心的な使い方なので、もちろん大正解です。でも、”between” の本当の心は、もう少し深いところにあります。それは、「一つ一つの要素が、それぞれ独立したものとしてハッキリと区別されている」という意識なんです。
AとBという2つの点があって、その間を一本の線で結ぶようなイメージ。その線の上にあるのが “between” です。大切なのは、AとBという2つの点が、それぞれ個別の存在として認識されているということです。
“between” は、数よりも「それぞれの要素が個別に見えているか」どうかがポイントになります。だから、その要素が3つ以上あっても、それぞれが「AとBとC」のように個別の存在として意識されていれば、”between” が使われるんです。
基本ルール:2つの「間」を表すBetween
まずは、皆さんがよく知っている基本的な使い方から確認しましょう。2つの人や物、場所などの「間」を指すときには、”between” を使います。
- I sat between my mother and my father.
私は母と父の間に座りました。 - The post office is between the bank and the supermarket.
郵便局は銀行とスーパーマーケットの間にあります。 - What is the difference between “affect” and “effect”?
“affect”と”effect”の違いは何ですか? (AとBという2つのものの比較)
これらの例では、「母と父」「銀行とスーパー」のように、対象が2つで、それぞれがハッキリと区別されていますよね。これが “between” の基本の形です。
【最重要】3つ以上でもBetweenを使うケース
ここからがこの記事の核心部分です!学校で習ったルールを一度アップデートしましょう。”between” は、対象が3つ以上であっても、それぞれの要素が個別のものとして認識されていれば、全く問題なく使えます。むしろ、そういう場面では “between” を使う方が自然なんです。
具体的にどんな場面で使われるのか、見ていきましょう。
1. 国や組織間の関係・協定
複数の国や会社の間で結ばれる条約や交渉事などでは、たとえ3カ国以上であっても、それぞれが独立した対等な存在として扱われるため “between” が使われます。
- The trade agreement was signed between Japan, the United States, and Canada.
その貿易協定は日本、アメリカ、カナダの間で結ばれた。 - Negotiations are taking place between the three companies.
その3社の間で交渉が行われている。
この場合、3つの国や会社がごちゃ混ぜの集団として見られているのではなく、「日本とアメリカ」「アメリカとカナダ」「日本とカナダ」といった、それぞれの間の個別の関係性(one-to-one relationship)が意識されているんです。
2. 個別の選択肢
3つ以上の選択肢の中から1つを選ぶときも、”choose between” が使われます。これも、A、B、Cという選択肢が、それぞれ別個のものとしてハッキリと提示されているからです。
- I can’t decide between the red dress, the blue one, and the black one.
赤いドレスと青いのと黒いののどれにするか決められないわ。 - You have to choose between going to college, getting a job, or traveling the world.
あなたは大学に行くか、就職するか、世界を旅するか、その中から選ばなければならない。
「あれ、選択肢なら “choose from” じゃないの?」と思った方、鋭いですね! “choose from a list” のように、多くの選択肢の中から選ぶ場合は “from” がよく使われます。一方、”choose between” は、提示された少数の選択肢を比較検討して、その中からじっくり選ぶ、というニュアンスが強くなります。
3. 物理的な位置関係
場所を説明するときも、3つ以上の明確な目印に囲まれている場合は “between” が使えます。
- Our campsite was in a beautiful valley between the mountains, the forest, and the lake.
私たちのキャンプ場は、山と森と湖の間の美しい谷にあった。
この文では、「山」「森」「湖」という3つのものが、それぞれ独立した目印として機能していますよね。だから “between” が自然なんです。
Betweenのまとめ
コアイメージ: 個々の要素がハッキリと区別されている「間」
数のルール: 基本は2つ。でも、3つ以上でも各要素が個別なら全く問題なし!
ポイント: 点と点を線で結ぶような、1対1の関係性が意識されている!
Amongの本当の顔は「集団の中」
さて、”between” の本当の姿が見えてきたところで、今度は “among” の探検に出かけましょう。”between” が個々の点を意識していたのに対し、”among” のコアイメージは「個々の要素が区別されない、ぼんやりとした一つの集団やグループの中」という感覚です。
たくさんの木々が生い茂る森の中にいる自分を想像してみてください。どの木がAで、どの木がBかなんて、いちいち区別しませんよね。ただ漠然と「木々に囲まれている」と感じるはずです。その感覚こそが “among” の世界なんです。
“among” は「~に囲まれて」「~の一員として」「~の中に」といった意味で、不特定多数の人や物の中にいる状態を表します。個々の要素は重要ではなく、「集団」として一括りに捉えられているのが特徴です。
基本ルール:3つ以上の「間」や「中」を表すAmong
こちらが、学校で習う “among” の基本的な役割です。個々の区別がつかないような、3つ以上の人や物に囲まれている状況を表します。
- He disappeared among the crowd.
彼は人混みの中に消えていった。 - A small cottage was hidden among the trees.
小さなコテージが木々の中に隠れていた。 - I found this old letter among his papers.
彼の書類の中からこの古い手紙を見つけた。
これらの例文では、「人混み(crowd)」や「木々(trees)」、「書類(papers)」は、一つ一つが区別されることなく、大きな「塊」や「集合体」として認識されていますよね。これが “among” が活躍する典型的な場面です。
「〜の一つ」「〜の一員」を表すAmong
“among” には「~に囲まれて」という意味の他に、「~の中の一員として」「~のうちの一つ」という意味合いもあります。”one of the most…” に近いニュアンスで使われることが多いです。
- She is considered to be among the best pianists in the world.
彼女は世界で最高のピアニストの一人だと考えられている。 - This novel is among my favorites.
この小説は私のお気に入りの一つです。
この使い方は、「世界最高のピアニストたち」というグループの「中の一員」として、「私のお気に入りの本たち」というコレクションの「中の一つ」として、対象を位置づけています。
AmongとAmongstの違いは?
時々、”amongst” という単語を見かけることがあるかもしれません。これは一体何なのでしょうか?
結論から言うと、“among” と “amongst” の意味は全く同じです。”amongst” は “among” の別バージョンで、より古風でフォーマルな響きがあります。現代のアメリカ英語では “among” を使うのが圧倒的に一般的ですが、イギリス英語では今でも “amongst” が使われることがあります。小説や格調高いスピーチなどで見かけるかもしれませんが、日常会話では “among” を使っておけば間違いありませんよ。
Amongのまとめ
コアイメージ: 個々の区別がない、ぼんやりとした「集団の中」
数のルール: 3つ以上の不特定多数が対象
ポイント: 雲の中にいるような、周りに溶け込んでいるイメージ!
実践!AmongとBetweenの使い分けドリル
さあ、”between” と “among”、それぞれの心が理解できたところで、最後の仕上げです!ここまでの知識がしっかり身についているか、クイズ形式で確認してみましょう。それぞれの単語のコアイメージを思い浮かべながら解いてみてくださいね。
クイズで最終チェック!この「間」はどっち?
これからいくつかのシチュエーションを提示します。カッコの中には “between” と “among” のどちらが入るのが自然か、考えてみてください。
第1問
The secret was shared only ( ) the two of us.
正解は… “between” です!
これは簡単でしたね。「私たち2人」という、2つの明確な個人の間での話なので、”between” が正解です。これは基本中の基本ですね!
第2問
There is a growing sense of anxiety ( ) the employees about the future of the company.
正解は… “among” です!
「従業員たち」というのは、一人一人の顔が区別されているわけではなく、「従業員」という一つの大きなグループとして捉えられています。その集団の中に不安が広がっている、というニュアンスなので “among” がぴったりです。
第3問
Switzerland lies ( ) France, Germany, Austria, and Italy.
正解は… “between” です!
「え、4カ国だから “among” じゃないの?」と思った方、素晴らしい!まさにこの記事の核心です。この文では、「フランス、ドイツ、オーストリア、イタリア」という4つの国が、それぞれ独立した個別の国として明確に名前を挙げられていますよね。このように、たとえ3つ以上でも、個々の要素がハッキリと示されている場合は “between” を使うんでしたね。
第4問
He is very popular ( ) his classmates.
正解は… “among” です!
第2問と似ていますね。「彼のクラスメイトたち」という集団の中で人気がある、ということなので “among” が正解です。「クラスメイトのA君、Bさん、C君…」と個別に考えているわけではなく、「クラスメイト」というグループ全体を指しています。
第5問
There was no one ( ) the survivors who could explain what had happened.
正解は… “among” です!
「生存者たち」というグループの中に、何が起こったか説明できる人はいなかった、という意味です。これも「生存者」という集団を指しているので “among” が適切です。「生存者たちの一員として、説明できる者はいなかった」というニュアンスですね。
どうでしたか?特に第3問が、今日のレッスンの理解度を測る良い試金石になったのではないでしょうか。
まとめ
長い時間、本当にお疲れ様でした!今回は、「2つならbetween、3つ以上ならamong」という、誰もが一度は覚える英語のルールに隠された、もっと深い意味を探る旅をしてきました。
最後に、この旅で得た最も大切な宝物、つまり二つの単語の本当の心を、もう一度確認しておきましょう。
- “Between” の心は「個別の関係性」です。対象となるものが、たとえ3つ以上であっても、それぞれがハッキリと区別された点として認識されている場合に活躍します。
- “Among” の心は「集団への帰属」です。対象となるものが、個々の区別なく、一つのぼんやりとした集団やグループとして認識されている場合に活躍します。
学校で習った「数のルール」は、このコアイメージを理解するための、あくまで入り口に過ぎません。その奥にあるネイティブの「意識」の違いを感じ取ることができれば、もうあなたは “between” と “among” の使い分けで迷うことはないでしょう。
英語学習は、こうしたルールの裏にある「なぜ?」を探ることで、もっと面白く、もっと深みのあるものになります。これからも、ルールの丸暗記で終わらせず、その言葉が持つ「心」を感じながら、楽しく英語の世界を探検していきましょうね!