英語の「if」と聞くと、ほとんどの方が「もし~なら」という条件を表す使い方を思い浮かべますよね。でも、「彼が来るかどうか知っていますか?」のように、「~かどうか」という名詞のかたまり(名詞節)を作る「if」があること、ご存知でしたか?そして、同じく「~かどうか」と訳される「whether」という単語もあります。この2つ、一体どうやって使い分ければいいのか、混乱してしまった経験はありませんか?
実はこの2つ、似ているようでいて、使える場所にははっきりとしたルールがあるんです。特に文法用語でいう「名詞節」として文の中で使う場合、このルールを知らないと、ネイティブには不自然に聞こえたり、場合によっては文法的に間違いになってしまったりすることも…。この記事を読めば、そんなモヤモヤが一気に晴れますよ!「~かどうか」を意味するときの「if」と「whether」、それぞれの役割と正しい使い方をマスターして、自信を持って使い分けられるようになりましょう!
「もし」だけじゃないifの正体
中学校で英語を習い始めるとき、多くの人が最初に「if = もし~なら」と覚えます。これはもちろん正しいのですが、実は「if」にはもう一つの大切な顔があるんです。それが「~かどうか」という意味で使われる「名詞節」のifです。
例えば、”I don’t know if he will come.” という文。これは「もし彼が来るなら、私は知らない」という意味ではありませんよね。「私は、彼が来るかどうかを知らない」という意味になります。この “if he will come” の部分が、「彼が来るかどうか」という一つの名詞のかたまりとして、”know” の目的語になっているんです。この「if」の存在が、「whether」との使い分けを難しくさせる大きな原因なんですよね。
名詞節の「if」と「whether」 決定的な違いは使える場所
では、いよいよ本題です。「~かどうか」を意味する名詞節を作るとき、「if」と「whether」はどう使い分けるのでしょうか。結論から言ってしまうと、その決定的な違いは「文の中で置ける場所」にあります。まずは、この絶対的なルールから押さえていきましょう。
基本ルール:「whether」は万能、「if」は制約あり
まず大原則として覚えておいてほしいのが、「whether」の方が「if」よりもずっと使える範囲が広い、ということです。「whether」は「~かどうか」を意味する名詞節を作るとき、ほとんどどんな場所にも置くことができます。一方、「if」は置ける場所が限定されている、少し気難しい単語なんです。
英語学習者さんにとっての鉄則は、「迷ったらwhetherを使えば、まず間違いない」ということです。特に、書き言葉やフォーマルな場面では、whether を使っておけば安全なケースがほとんどですよ。
それでは、具体的に「if」が使えなくて、「whether」しか使えないのはどんな場面なのでしょうか?大きく分けて3つのパターンがあります。この3つを覚えれば、使い分けの8割はマスターしたも同然です!
「if」が使えない3つのパターンを徹底解説
ここが今回の記事で一番大切なポイントです。以下の3つの場面では、「~かどうか」という意味で「if」を使うことはできず、「whether」を使わなければなりません。一つずつ、じっくり見ていきましょう。
パターン1:文の主語になる名詞節では「whether」のみ
名詞節は、文の中で主語(S)、目的語(O)、補語(C)の役割を果たします。このうち、主語になる場合は「whether」しか使えません。
〇 正しい文 (whether)
Whether he agrees or not is not important.
(彼が同意するかどうかは重要ではない。)
この文では “Whether he agrees or not” という名詞のかたまりが、文全体の主語になっています。これはOKです。
× 間違いの文 (if)
If he agrees or not is not important. (不自然な文)
なぜ “if” ではダメなのでしょうか?それは、文頭に “if” が来ると、聞き手や読み手はほぼ無意識に「もし~なら」という条件節だと予測してしまうからです。「もし彼が同意するなら…」と読み進めた後に “is not important (重要ではない)” と続くと、「え?意味が通じない…」と混乱させてしまうんですね。
他にもいくつか例を見てみましょう。
- Whether we can finish it on time depends on you.
(それを時間通りに終えられるかどうかは、あなた次第です。) - Whether she knew the fact remains a mystery.
(彼女がその事実を知っていたかどうかは、謎のままです。)
このように、文の主役である主語の位置には、意味が一つに定まる「whether」を置くのがルールです。
注意! “if” の節を主語にしたい場合、”It” を使った形式主語の構文にすれば可能になることがあります。例えば、”It is not important if he agrees or not.” のように後ろに回せば、”if” も使えるようになります。ただし、少し回りくどい印象になることもあるので、シンプルに “Whether…” と始める方がスマートな場合が多いですよ。
パターン2:前置詞の目的語では「whether」のみ
次に、”about”, “on”, “of”, “for” といった前置詞の後ろに「~かどうか」という名詞節を置きたい場合。この前置詞の目的語になる場合も「whether」しか使えません。
〇 正しい文 (whether)
We talked about whether we should postpone the meeting.
(私たちは会議を延期すべきかどうかについて話し合った。)
“about” という前置詞の後ろに、”whether” が導く名詞節が続いていますね。これはOKです。
× 間違いの文 (if)
We talked about if we should postpone the meeting. (不自然な文)
“about if” という並びは、ネイティブにはとても奇妙に聞こえます。前置詞の後ろには “if” は置けない、と覚えてしまいましょう。
こちらも例文で確認してみましょう。
- The decision will depend on whether you pass the test.
(その決定は、あなたがテストに合格するかどうかにかかっている。) - I have some doubts about whether this plan will work.
(私はこの計画がうまくいくかどうかについて、いくつか疑問を持っています。) - Thank you for checking whether everything is correct.
(すべてが正しいかどうか確認してくれてありがとう。)
パターン3:不定詞 (to do) が続く場合は「whether」のみ
「~すべきかどうか」と言いたいとき、”whether to do” という便利な形があります。この「to do(不定詞)」と直接結びつけることができるのは「whether」だけです。
〇 正しい文 (whether)
I can’t decide whether to buy the red one or the blue one.
(赤いものを買うべきか青いものを買うべきか決められない。)
“whether to buy” で「買うべきかどうか」という名詞のかたまりになっています。
× 間違いの文 (if)
I can’t decide if to buy the red one or the blue one. (間違い)
“if to do” という形は英語には存在しません。これは絶対的なルールなので、しっかり覚えてくださいね。
この “whether to do” の形は、色々な動詞の後で使えてとても便利です。
- I don’t know whether to tell him the truth.
(彼に本当のことを言うべきかどうかわからない。) - She was wondering whether to apply for the job.
(彼女はその仕事に応募すべきかどうか迷っていた。) - The main question is whether to continue or stop.
(主な問題は、続けるべきかやめるべきかだ。)
意外と知らない?「or not」の位置で見るifとwhetherの違い
「~かどうか」という表現には、「or not (そうでないか)」という言葉がセットで使われることがよくありますよね。この「or not」を置ける位置にも、「if」と「whether」で違いがあるんです。
結論から言うと、「whether」は「or not」と隣接させることができますが、「if」はできません。
1. whether or not …
「whether」は、直後に「or not」を続けて “whether or not” という一つのフレーズとして使うことができます。これは文頭でも文中でも使えます。
Whether or not you like it, you have to do it.
(あなたがそれを好むかどうかに関わらず、やらなければならない。)
I want to know whether or not he is coming.
(彼が来るのか来ないのか、私は知りたい。)
2. if … or not
一方、「if」を使う場合は、「or not」を直後に置くことはできず、節の最後に離して置くのが普通です。
I want to know if he is coming or not.
(彼が来るのか来ないのか、私は知りたい。)
× I want to know if or not he is coming. (不自然)
「or not」は、意味を強調したいときや、選択肢が二つしかないことを明確にしたいときに使われます。省略しても文法的には問題ないことが多いですが、この位置のルールの違いは、二つの単語の性質の違いをよく表していて面白いですよね。
なぜネイティブは「if」と「whether」を使い分けるのか?
ここまで、文法的なルールの違いを見てきました。「ifには制約が多いんだな」ということは、お分かりいただけたかと思います。では、そもそもなぜ、こんなに似た意味の単語をネイティブは使い分けているのでしょうか?ここからは、その背景にあるニュアンスの違いにも少し踏み込んでみましょう。
曖昧さを避けるための知恵としての「whether」
「if」が抱える最大の問題は、すでにお話しした通り、「もし~なら」という条件節の意味と「~かどうか」という名詞節の意味の、2つの顔を持っていることです。これが時々、文の意味に曖昧さを生んでしまう原因になります。
例えば、こんな文があったとします。
Please let me know if you need any help.
この文は、2通りに解釈できる可能性があります。
- 解釈1(条件): (助けが必要かどうかは私にはわからないけれど)もし助けが必要になったら、私に知らせてくださいね。
- 解釈2(名詞節): あなたが助けを必要としているかどうかを、私に知らせてください。(YesかNoかの返事がほしい)
もちろん、ほとんどの状況では文脈からどちらの意味か判断できます。しかし、ビジネスメールや契約書、論文など、解釈が一つに定まる必要があるフォーマルな場面では、このような曖昧さは避けたいですよね。
そこで活躍するのが「whether」です。「whether」には「~かどうか」という意味しかないので、誤解のしようがありません。
Please let me know whether you need any help.
(あなたが助けを必要としているかどうかを、私に知らせてください。)
このように、「whether」を使うことで、書き手の意図が明確に伝わります。そのため、フォーマルな文章や、意味をはっきりさせたいときには「whether」が好まれる傾向があるんです。
口語では「if」が好まれる?自然な使い分けのコツ
では、日常会話ではどうでしょうか?実は、これまで見てきた「ifが使えない3つのパターン」に当てはまらない限り、つまり動詞の目的語として使う場合には、日常会話では「if」の方が「whether」よりも頻繁に使われます。
- I don’t know if I have enough time. (とても自然)
- I wonder if she likes me. (とても自然)
- Could you ask him if he’s free tomorrow? (とても自然)
これらの文で「whether」を使っても文法的には全く問題ありませんが、少し硬くて、まどろっこしい印象を与えることがあります。「whether」は少しカチッとした響きを持つ単語なので、友人との気軽な会話では「if」の方がスムーズで自然に聞こえることが多いんです。
つまり、使い分けのコツは、「場面」と「明確さの必要度」を意識することだと言えますね。
まとめ:「if」と「whether」の使い分け完全マスターチャート
さて、ここまで「if」と「whether」の違いについて、ルールとニュアンスの両面から詳しく見てきました。最後に、すべての情報を一つの表にまとめて、知識を整理しましょう!この表を頭に入れておけば、もう迷うことはありません。
チェック項目 | Whether (万能タイプ) | If (制約ありタイプ) |
---|---|---|
文の主語 | 〇 使える Whether he comes is important. | × 使えない |
動詞の目的語 | 〇 使える I don’t know whether he comes. | 〇 使える I don’t know if he comes. |
前置詞の目的語 | 〇 使える It depends on whether he comes. | × 使えない |
to 不定詞との接続 | 〇 使える (whether to do) I don’t know whether to go. | × 使えない |
or not の位置 | 直後にも文末にも置ける whether or not he comes whether he comes or not | 文末に置くのが基本 if he comes or not |
フォーマル度 | ややフォーマル 書き言葉やビジネスで好まれる | カジュアル 日常会話で頻繁に使われる |
一見すると複雑に見える「if」と「whether」の使い分けですが、ルール自体は意外とシンプルですよね。「ifが使えない3つのパターン」をしっかり押さえた上で、あとは場面に応じて「より自然なのはどっちかな?」と考えてみるのが上達への近道です。最初は難しく感じるかもしれませんが、たくさんの英語に触れる中で、少しずつその感覚が身についていきますよ。今回の記事が、あなたの英語学習の助けになれば嬉しいです!