英語の比較表現の中でも、「クジラの構文」として知られる “A is no more B than C is D.” や、”no less than ~”、”not more than ~”、”not less than ~” といったフレーズに出会って、「え、これってどういう意味?」「肯定なの?否定なの?」「普通の比較と何が違うの?」と頭を抱えてしまった経験、ありませんか? これらの表現は、形が似ている上に、日本語の感覚とは少し違うニュアンスを含むため、英語学習者にとっては非常に紛らわしく、理解しにくいポイントの一つですよね。特に、大学受験やTOEICなどの試験では、これらの意味の違いを正確に捉えることが求められるため、避けては通れない道でもあります。
「もう、more とか less とか、no とか not とか、ごちゃごちゃしてて無理!」そんな風に感じている方もいるかもしれません。でも大丈夫!この記事では、そんな皆さんのために、”no more/less than” や “not more/less than” といった、比較級を使った少し複雑な慣用表現について、それぞれの意味とニュアンスの違い、そして覚え方のコツや訳し方のポイントを、具体的な例文を使いながら、一つひとつ丁寧に、そして分かりやすく解説していきます。この記事を読み終わる頃には、きっとこれらの表現のモヤモヤがスッキリ晴れ、自信を持って意味を理解し、さらには使いこなせるようになっているはずですよ!

クジラの構文、名前は聞いたことあるけど…。これでスッキリわかるかな?
no more/less than 系表現の基本 – 「差がゼロ」の感覚が鍵
まずは、これらの表現の根底に流れる基本的な考え方と、”no” と “not” が比較級と結びついたときにどんな意味合いを持つのかを見ていきましょう。「差がない」というイメージがポイントになります。
“no + 比較級” が持つ「全く~ない」「少しも~ない」の強い否定
これらの慣用表現を理解する上で、まず押さえておきたいのが、“no + 比較級” が持つ非常に強い否定のニュアンスです。
通常、”not + 比較級” は「(それよりは)~ではない」という単純な比較の否定を表しますが(例: He is not taller than me. 彼は私より背が高くはない)、”no + 比較級” となると、「全く~ない」「少しも~ない」「~という差はゼロだ」という、より強調された、感情的な否定の意味合いが強くなります。
例えば、
- He is no taller than I am. (彼は私と同じくらいの背の高さだ[私より少しも背が高くない]。)
→ 彼が私より背が高いという可能性は「ゼロ」であり、実質的に「私と同じくらい(か、もしかしたら低いかもしれない)」というニュアンス。単純な “He is not taller than I am.” (彼は私より背が高くはない) よりも、差がないことを強調しています。
- This is no better than that. (これはあれと同じくらい良くない[あれより少しも良くない]。)
→ これがアレより良いという点は「ゼロ」。どっちもどっち、という感じ。
この「no + 比較級」が持つ「差がゼロ」という感覚が、これから見ていく様々な慣用表現の解釈の土台になります。
“no more … than ~” (クジラの構文) – 「~と同様に…でない」
さて、いよいよ有名な「クジラの構文」の登場です。形は、A is no more B than C is (D). となります。
直訳すると「AはCが(Dで)ある以上にBではない」となり、非常に分かりにくいですよね。
この構文のポイントは、「CがDでないのと全く同じように、AもBではない」という、AとCの両方を否定するニュアンスです。そして、多くの場合、聞き手にとって「CがDでない」ことは自明の理、つまり当たり前のこととして提示されます。その当たり前のことと比べることで、「AがBでない」こともまた当たり前だ、と強調するのです。
代表的な例文 (クジラの構文):
- A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
(クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同じだ。 / クジラは馬と同様に全く魚ではない。)
→ 馬が魚でないのは当たり前ですよね? それと全く同じくらい、クジラも魚ではないんですよ、と強く否定しているわけです。
「クジラが魚である度合い」と「馬が魚である度合い」を比べて、その差は「no more (ゼロ)」だ、つまり両方とも魚ではない、という論理です。
訳し方のコツ:
- 「CがDでないのと同様に、AはBでない」
- 「AがBでないのは、CがDでないのと同じだ」
- 「AはCと同様に少しもBではない」
文脈に合わせて、AとCの否定が明確に伝わるように訳しましょう。
クジラの構文は、一見複雑ですが、「than以下の自明の否定」を引き合いに出して、「それと同じくらい、前の部分も当たり前に否定されるんですよ」と主張している、と考えれば、少しは分かりやすくなるかもしれませんね。「馬が魚じゃない?当たり前でしょ。クジラが魚じゃないのも、それくらい当たり前なんだよ!」という感じです。
“no less … than ~” – 「~と同様に…である」「~に劣らず…だ」
“no more … than ~” が両者を否定したのに対し、A is no less B than C is (D). という形は、「CがDであるのと全く同じように、AもBである」という、AとCの両方を肯定するニュアンスになります。そして、多くの場合、「CがDである」ことは、驚くべきことや称賛すべきこととして提示されます。
直訳すると「AはCが(Dで)ある以上にBでなくはない」となり、これまた分かりにくいですね。
ポイントは、「AがBである度合い」と「CがDである度合い」を比べて、その差は「no less (ゼロ)」だ、つまり両方とも同じくらい「BでありDである」という肯定的な意味合いです。「~に劣らず…だ」という訳がしっくりくることが多いです。
例文:
- She is no less beautiful than her sister (is beautiful).
(彼女は姉に劣らず美しい。 / 彼女は姉と同様に全く美しい。)
→ 姉が美しいのは言うまでもないが、彼女もそれに全く引けを取らないくらい美しい、という称賛のニュアンス。
- He is no less diligent than you are (diligent).
(彼は君に劣らず勤勉だ。)
- This project is no less important than the previous one.
(このプロジェクトは前のものに劣らず重要だ。)
訳し方のコツ:
- 「CがDであるのと同様に、AはBである」
- 「AはCに劣らずBである」
AとCの両方が肯定的に評価されていることを意識して訳しましょう。
“no more … than ~” (両方否定) と “no less … than ~” (両方肯定) は、形がよく似ているので混同しやすいですが、more か less かで意味が正反対になります! ここはしっかり区別して覚えましょう。「more (多い方) を否定するからマイナス」、「less (少ない方) を否定するからプラス」と、無理やりこじつけて覚えるのも一つの手かも…?

クジラの構文、やっと少しイメージできたかも!”no less … than” はその逆で両方肯定なんだね!ややこしいけど、面白い!
数量を表す no more/less than, not more/less than の違い
次に、”no more/less than” や “not more/less than” が、金額や数量、時間などの「数」や「量」を表す語句と結びついた場合に、どんな意味になるのかを見ていきましょう。ここも、”no” と “not” のニュアンスの違いが鍵になります。
“no more than + 数詞” – 「たった~しか…ない」(少ないという驚き・不満)
“no more than + 数詞 (+ 名詞)” は、「(驚くほど、あるいは残念なことに)たった~しか…ない」「わずか~にすぎない」という意味を表します。その数が「思ったよりも少ない」「期待していたよりも少ない」という、話し手の主観的な驚きや不満、落胆のニュアンスが込められます。
意味のポイント: 数が少ないことに対する感情的な評価 (驚き、不満など)。
ほぼ同じ意味の表現: only, as little as
例文:
- I have no more than 1,000 yen with me now. (私は今、たった1000円しか持っていない。)
→ 1000円という金額が、予想よりも少ない、あるいは必要額に足りない、というネガティブな気持ち。
- There were no more than ten people at the meeting. (会議にはわずか10人しかいなかった。)
- He slept for no more than four hours last night. (彼は昨夜、たった4時間しか寝なかった。)
この “no more than” は、客観的な数量を述べているのではなく、「その数で終わり、それ以上はない」という限界と、それに対する感情を表しているのです。
“no less than + 数詞” – 「(驚くほど)~もの多くの」(多いという驚き・称賛)
一方、“no less than + 数詞 (+ 名詞)” は、「(驚くほど、あるいは素晴らしいことに)~もの多くの」「~も(たくさん)」という意味を表します。その数が「思ったよりも多い」「期待していたよりも多い」という、話し手の主観的な驚きや称賛、満足感のニュアンスが込められます。
意味のポイント: 数が多いことに対する感情的な評価 (驚き、称賛など)。
ほぼ同じ意味の表現: as many as, as much as
例文:
- She has no less than five cars. (彼女は車を5台も持っている。)
→ 5台という数の多さに驚いている、あるいは感心している気持ち。
- He donated no less than one million dollars to the charity. (彼はその慈善団体に100万ドルもの大金を寄付した。)
- The project took no less than ten years to complete. (そのプロジェクトは完成までに10年もの歳月を要した。)
この “no less than” も、客観的な数量だけでなく、「その数に達している、それ以下ではない」という事実と、それに対する感情を表しています。
“no more than” (たった~しか) と “no less than” (~も多く) は、意味が正反対ですね! “more” なのに「少ない」、”less” なのに「多い」という意味になるので、最初は混乱するかもしれません。「多い方 (more) を否定するから、結局少ない」「少ない方 (less) を否定するから、結局多い」と考えると、少しは整理できるでしょうか。
“not more than + 数詞” – 「多くても~だ」「せいぜい~だ」(上限)
次に、”no” ではなく “not” を使った場合です。“not more than + 数詞 (+ 名詞)” は、「多くても~だ」「せいぜい~だ」「~以下だ」という意味を表します。これは、客観的な上限を示す表現で、話し手の感情的な評価はあまり含まれません。
意味のポイント: 客観的な上限。「それより多くはない」。
ほぼ同じ意味の表現: at most, ~ or less
例文:
- The journey will take not more than two hours. (その旅はせいぜい2時間しかかからないだろう。/ 2時間以内だろう。)
→ 2時間を超えることはない、という客観的な見通し。
- Please write your essay in not more than 500 words. (エッセイは500語以内で書いてください。)
- I can lend you not more than 10,000 yen. (君に貸せるのは多くても1万円までだ。)
“no more than” が「たった~だけ(少ない!)」という感情的なニュアンスだったのに対し、”not more than” は「~を超えることはない」という事実に基づいた上限を示します。
“not less than + 数詞” – 「少なくとも~は」(下限)
そして、“not less than + 数詞 (+ 名詞)” は、「少なくとも~は」「~以上は」という意味を表します。これも、客観的な下限を示す表現で、話し手の感情的な評価はあまり含まれません。
意味のポイント: 客観的な下限。「それより少なくはない」。
ほぼ同じ意味の表現: at least, ~ or more
例文:
- You need not less than three years of experience for this job. (この仕事には少なくとも3年の経験が必要です。/ 3年以上の経験が必要です。)
→ 3年未満ではダメだ、という客観的な条件。
- The temperature will be not less than 25 degrees Celsius tomorrow. (明日の気温は少なくとも25度にはなるでしょう。)
- He earns not less than $5,000 a month. (彼は月に5000ドル以上は稼ぐ。)
“no less than” が「~も多く(すごい!)」という感情的なニュアンスだったのに対し、”not less than” は「~を下回ることはない」という事実に基づいた下限を示します。
no/not + more/less than + 数詞 のまとめ
表現 | 意味 | ニュアンス・感情 | ほぼ同じ意味の表現 |
---|---|---|---|
no more than + 数詞 | たった~しか…ない、わずか~ | 少ないことへの驚き・不満・落胆 (主観的) | only, as little as |
no less than + 数詞 | ~もの多くの、~も | 多いことへの驚き・称賛・満足 (主観的) | as many as, as much as |
not more than + 数詞 | 多くても~だ、せいぜい~、~以下 | 客観的な上限 | at most, ~ or less |
not less than + 数詞 | 少なくとも~は、~以上 | 客観的な下限 | at least, ~ or more |
この4つの使い分けは、TOEICの Part 5 などでも頻出の超重要ポイントです! “no” がつく方は話し手の感情(驚き、不満など)が強く、”not” がつく方は客観的な上限・下限を示す、と覚えると区別しやすいですよ。そして、more なのに「少ない」、less なのに「多い」となる “no” のパターンは特に注意です!

うわー!no と not で全然意味が違うし、more と less もひっくり返るなんて!これは何度も見返さないと覚えられないかも…。でも、表で見ると少し整理できた!
その他の no more/less than を使った重要表現
“no more … than ~” (クジラの構文) や、数量を表す “no more/less than + 数詞” 以外にも、”no more/less” を使った覚えておくべき重要な慣用表現がいくつかあります。これらも、比較の「差がゼロ」という感覚が根底にあります。
nothing more than ~ / little more than ~ – 「~にすぎない」
nothing more than ~ や little more than ~ は、「~以上の何ものでもない」「~より少し多いだけだ」という意味から、「~にすぎない」「ほんの~だ」と、価値や重要性が低いことを表す表現です。”only” や “merely” に近いニュアンスです。
- It was nothing more than a joke. (それは冗談にすぎなかった。)
- He is nothing more than a child. (彼は子供にすぎない。)
- This is little more than a guess. (これは推測にすぎない。)
- She said nothing more than “hello.” (彼女は「こんにちは」と言っただけだった。)
“no more than” が主に数量について「たった~しか」と言ったのに対し、”nothing more than” や “little more than” は、物事の本質や価値について「~という程度にすぎない」と言うときに使われます。
nothing less than ~ – 「まさに~だ」「~にほかならない」(驚き・強調)
一方、nothing less than ~ は、「~より少ないものではない」という意味から、「まさに~そのものだ」「~にほかならない」「驚くべきことに~だ」と、対象の価値や重要性、あるいは意外性を強調する表現です。しばしば、驚きや称賛のニュアンスを伴います。
- His success was nothing less than a miracle. (彼の成功は奇跡にほかならなかった。)
- What she achieved was nothing less than extraordinary. (彼女が達成したことはまさに並外れたものだった。)
- It was nothing less than a betrayal. (それは裏切り以外の何ものでもなかった。)
“no less than + 数詞” が数量の多さを強調したのに対し、”nothing less than” は、質的な面で「まさに~だ!」と驚きや強い断定を表します。
“nothing more than ~” (~にすぎない) と “nothing less than ~” (まさに~だ) も、意味が正反対になるペアですね! more なのに「低い評価」、less なのに「高い評価」という、ねじれの関係になっています。
(and) what is more – 「その上」「さらに重要なことには」
これは直接 “no” は含みませんが、比較の “more” を使った重要な接続表現です。(and) what is more は、「そして、さらに重要なことには」「おまけに」「その上」という意味で、前述の事柄に、さらに重要な情報や、より強調したい情報を付け加えるときに使われます。
- The hotel was comfortable, and what is more, it was very cheap. (そのホテルは快適で、その上、とても安かった。)
- He is smart and hardworking. What is more, he is very kind. (彼は頭が良くて勤勉だ。さらに重要なことには、とても親切だ。)
- She speaks English fluently, and what is more, she can also speak French and Spanish. (彼女は英語を流暢に話し、おまけに、フランス語とスペイン語も話せる。)
類似表現として、what is better (さらに良いことには), what is worse (さらに悪いことには), what is most important (最も重要なことには) などもあります。これらは、付加する情報の性質に合わせて使い分けられます。
“what is more” は、前の文の内容を補強し、議論をさらに進めるときに便利なフレーズです。エッセイやスピーチなどで効果的に使えると、論理的な構成力をアピールできますよ。

nothing more than と nothing less than も正反対!面白いけど、覚えるのが大変だぁ。”what is more” は使えそう!
まとめ – no more/less than 系表現を使いこなし、比較マスターへ!
今回は、英語の比較表現の中でも特に難解とされる “no more/less than” や “not more/less than” を使った様々な慣用表現について、その基本的な考え方から具体的な意味、ニュアンスの違い、そして覚え方のコツまで、詳しく見てきました。これで、今まで「なんだかよくわからない…」と敬遠しがちだったこれらの表現が、少しでも身近なものになったのではないでしょうか。
最後に、この記事で学んだ重要なポイントをまとめておきましょう。
- “no + 比較級” の基本:
- 「全く~ない」「少しも~ない」「差がゼロ」という強い否定のニュアンス。
- クジラの構文:
- A is no more B than C is (D). → 「CがDでないのと同様に、AはBでない」(両方否定)
- 例: A whale is no more a fish than a horse is.
- 両方肯定の表現:
- A is no less B than C is (D). → 「CがDであるのと同様に、AはBである」(両方肯定)
- 例: She is no less beautiful than her sister.
- 数量表現の使い分け:
- no more than + 数詞: 「たった~しか…ない」(少ないことへの主観的評価: 驚き・不満)
≒ only, as little as
- no less than + 数詞: 「~もの多くの」(多いことへの主観的評価: 驚き・称賛)
≒ as many as, as much as
- not more than + 数詞: 「多くても~だ、~以下」(客観的な上限)
≒ at most, ~ or less
- not less than + 数詞: 「少なくとも~は、~以上」(客観的な下限)
≒ at least, ~ or more
- no more than + 数詞: 「たった~しか…ない」(少ないことへの主観的評価: 驚き・不満)
- その他の重要表現:
- nothing more than ~: 「~にすぎない」
- nothing less than ~: 「まさに~だ」「~にほかならない」
- (and) what is more: 「その上」「さらに重要なことには」
これらの “no more/less than” や “not more/less than” を使った慣用表現は、単なる比較を超えて、話し手の主観的な感情や評価、あるいは論理的な強調を伝えるための、非常に高度で洗練された言葉の道具です。形が似ていて紛らわしいものが多いですが、それぞれの表現が持つコアなニュアンス(特に “no” の持つ「差がゼロ」という強い感覚や、感情的な響き)を理解することが、攻略の鍵となります。
最初は、それぞれの意味を正確に覚えるのが大変かもしれません。でも、この記事のまとめ表や例文を何度も見返し、声に出して練習し、そして何よりも実際の英文の中でこれらの表現に出会ったときに「あ、これだ!」と意識することで、必ずその感覚が身についてきます。特に、TOEICや大学入試では、これらの表現の正確な理解が読解問題や文法問題の正否を分けることも少なくありません。
この記事が、皆さんの英語学習の旅において、比較表現の難関を突破し、より深く、より正確な英語理解へと進むための一助となれば、これ以上嬉しいことはありません。楽しみながら、言葉の持つ面白さと奥深さを探求していってくださいね!

no more/less than と not more/less than の違い、やっと整理できた気がする!クジラの構文も、もう一度じっくり復習しなきゃ!でも、これで比較表現が怖くなくなるかも!
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